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第8回:Lkhagvadorj Gansukh (Haguwa)(ハガワドルジ・ガンスフ(ハグワー))
モンゴル・ウランバートル出身。
在モンゴル大使館推薦国費留学生。
2000年4月に来日し、国際学友会で一年間日本語を勉強したのち東京工業高等専門学校3年次に編入、現在同校5年生。
※「高等専門学校」について
高等専門学校とは、昭和30年以来の日本経済の高度成長と科学技術の著しい進歩に伴い、産業界からの技術者育成の要請に応え制度化された、高等教育機関です。大学・短大という他の高等教育機関と異なり中学校卒業で入学でき、修業年限は5年間です。

高等専門学校では5年間の一貫教育により一般科目と専門科目を効率的に学ぶので、大学より2年間早く卒業できますが、カリキュラムが充実しており、特に留学生はとても忙しいようです。留学生は、通常の授業に加えて、日本語の授業や母国とのカリキュラムの違いによる差を埋めるための補習講義などがあります。今回インタビューをしたモンゴル出身の留学生ハガワドルジ・ガンスフ君の時間割表には、朝8時40分から夕方16時30分までびっしりと授業が並んでいますが、これが学生の通常のタイムテーブルだそうです。夕方からは日本語の補習があるというハガワドルジ君、通称ハグワー君はその前の貴重な自由時間を割いてインタビューに応えてくれました。
― ハグワー君は文部科学省国費留学生ですね。日本政府の国費留学生制度はどうやって知りましたか?またどうして日本に留学しようと思ったのですか?

最初は友達から日本の国費留学生制度について聞きました。日本以外にも色々な国、例えばロシア、中国、キューバ等からの奨学金制度もあったのですが、その中で日本を選びました。最近日本とモンゴルの交流関係がとても良くなってきているし、日本がモンゴルに経済支援もしているから、興味がありました。戦後の日本が今のような先進国までどのように発展してきたかということも知りたかったのです。実は僕は、モンゴルのテレビで「おしん」を見て初めて、戦争直後の日本が貧しく厳しい状況にあったということを知ったのですよ。モンゴルでは今ではNHKの中継で相撲まで見られるようになり、以前と違って日本の情報がいっぱい入るようになりました。
― 来日前に日本語を勉強する機会はありましたか?

モンゴルにも最近は日本語学校が多く出来ていて、私も来日前に日本語学校に一ヶ月くらい通いました。一ヶ月かかってひらがな、カタカナ、1から10までの数字を覚えて日本に来てみたら、日本語学校の一日目の授業でそれを全部教えてしまいました。僕の日本語の準備は一日分だけだったのです(笑)。
― 日本語学校で行われる一年間の予備教育でも、授業は最初から日本語で行われますよね?そんなにすぐ日本語を話せるようになるのですか?

日本語の発音は私たちモンゴル人にとっては簡単で、またモンゴルと日本語の文法は似ています。それでも、最初の年は殆ど日本語をしゃべれませんでした。でも日本語学校の先生方が素晴らしくて、日本語だけを使って根気よく日本語を教えて下さいました。今でも先生方には本当に感謝しています。また、夏休みには、ホームステイとか色々な留学生向けのイベントがあります。私も最初の年、北海道で3週間くらいホームステイをしましたが、それで大分日本語が話せるようになりました。
― 高等専門学校では5年生は全員卒業研究をまとめるそうですね。ハグワー君の卒業研究について教えて下さい。

僕は今電子工学科で「デジタル変復調システムの教材開発」というテーマの卒業研究に取り組んでいます。デジタル変復調システムは携帯電話や無線に使われている技術で、音声を電波に変えて送信し、それを携帯電話等で受信したものが音声に変えられます。このシステムを変復調システムといいますが、大事な通信技術なので、電子工学系の学校でこれを勉強するのは必須です。ところが、今のところ、このシステムについて勉強するための良い実験教材がありません。それでこのシステムを勉強するための実験教材を作成して、この高等専門学校や、他の電子工学の学校の実験に利用して欲しいと考えています。実はこのプロジェクトは先輩達も含めて3年間も研究されているテーマなので、今年は完成させたいと思っています。通信の技術はどんどん変わりますから、そのうちデジタル変復調システムとは別の技術も出てくると思いますので、出来るだけ早く完成させたいと思っています。
― 高等専門学校の寮生活はどうですか?また週末はどうしているのですか?

寮生活はけっこう楽ですよ。私は忙しくて時間が無いので自炊をしないのですが、寮の食堂が朝昼晩ひらいているので楽です。寮は留学生も日本人も一緒の共同生活です。週末は、仲の良いモンゴル人の友達が都立大学で法律を勉強しているので、よく遊びにいきます。その友達は私費留学生で、日本人の保証人の家にホームステイをしています。他にはモンゴルの後輩がいる駒場の留学生会館によく行きます。留学生会館に住んでいる留学生の場合、日本語が出来なく、英語や他の外国語もできないと、他の外国人留学生と話すこともできないし日本人の友達もいなくて孤立してしまうこともあります。昨日は、そういう不安を持つ後輩の留学生や、アドバイスが出来る先輩の留学生が集まって、日本語学校の先生達も交えて話し合いがあったのです。今度、そういうアジアの留学生の悩みについてみんなで解決策を考えるための相談会を企画することになったのです。
― 卒業後はどうするのですか?

国費留学生の期間が終了するので、いったんモンゴルに帰国し、就職のために再来日する予定です。就職は、代々木にあるソフトウェアの会社から内定をもらっています。そこではモンゴル人が6人働いているんですよ。僕はいずれはモンゴルに帰るつもりですが、まず日本の会社を見てみたいのです。日本の会社では本当に良く働くと聞いていますが、実際どのようにすればそんなに働けるのか、見てみたいのです。僕が感じるのは、日本人は何か仕事をやる、と言えば、必ず責任を持ってやるということです。それに日本人は何かをやる前にきちんと計画を立てて、それからその仕事が出来ると思ってから、初めて口に出して「やる」と言いますよね。
― 将来の夢は?

せっかく日本という先進国に来ているので、優れた技術を身につけて、モンゴルを日本みたいな先進国にするために役立てたいと思います。そのために就職するのだから。高等専門学校出身の留学生は進学することが多いですよね。僕も、親や周りの人に、大学に進学るよう勧められましたが、やはり進学よりも実際に社会に出た方が身に付くと思いました。モンゴルには今電子工学の分野の仕事が無いですが、自分が帰国したら専門の電子工学の分野での仕事を自分の手で創り出すのが夢です。
― モンゴルで知っていた日本と、こちらで実際に見た日本はどういう風に違いますか?

一番驚いたことは人が多いということです。渋谷ではこんなに多い人がどこから出てくるのか、と本当にびっくりしました。モンゴルでは、知らない人とお互い同士の足がぶつかると、握手するという習慣があります。ところが山手線は混んでいますから必ず人とぶつかりますよね、そうすると最初の頃は、習慣で、思わず後ろを向いてさっと手を差し出してしまい、手を差し出された日本人が吃驚するというようなことがありました。今は僕も随分日本人みたいになってしまって、先生から電話がかかってくると電話にむかってお辞儀をしてしまい、同じモンゴル人の友達に笑われます。モンゴルと日本は文化が違います。文化が違う人たちですから毎日本当にいろいろ刺激を受けます。
― 日本に留学して良かったと思うことを一つだけあげるとしたら?

学校の工場見学や夏期研修で、日本の最先端技術を見ることができたことです。電気機器の会社では、チップを作るときのシリコンの固まりを裁断する機械を見ました。次に、そのシリコンを加工している機械が、まるで印刷をしているみたいですごいな、と思いました。それから、車の製作を見学に行ったときは、コストダウンのためにスーパーパソコンを利用したシミユレーションで車を作っている場面を見て本当に感激しました。4年生の時は、実習として、夏休みを利用して東京の国分寺にある会社の工場にインターンとして派遣されました。これは音響関係や補聴器などの会社なのですが、現場で実習をすることが出来て、大変貴重な経験でした。
― 高等専門学校を目指す後輩にアドバイスをいただけますか?

とりあえず日本語の勉強をしておいた方がいいですね。それから出来れば日本の文化習慣を知っておくべきですね。例えば日本人がどういうことを嫌がるかとか、どういうことが失礼にあたるのかを、日本に来る前に勉強することが出来たら良いと思います。


掲載日:2003年12月22日


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